※本記事は2026年6月22日時点の情報に基づいています。改正の細部は今後の国税庁の通達・告示等で確定する部分があります。筆者の実務経験(税理士事務所2年半・経理財務14年・現在広告会社CFO)をもとに執筆していますが、個別の判断は税理士等の専門家にご確認ください。
青色申告特別控除が、大きく見直されます。
令和8年度税制改正により、青色申告特別控除の最大額が現行の65万円から75万円へ引き上げられることが決まりました。一方で、書面(紙)申告の55万円控除が実質廃止されるなど、個人事業主・フリーランスにとって影響の大きい改正です。
「自分はどの控除額になるのか」「今から何を準備すればいいのか」——その疑問に、現役CFO・税理士4科目合格の立場からわかりやすくお答えします。
📌 この記事の要点
- 令和9年分(2027年分)の所得税から適用(住民税は令和10年分から)
- 最大75万円控除が新設(複式簿記+e-Tax+優良な電子帳簿等)
- 書面申告の55万円控除は実質廃止。複式簿記でも紙申告なら10万円に
- 収入1,000万円超の簡易簿記は10万円控除の対象外(0円)に
- 準備の勝負どころは2026年中。優良電子帳簿は2027年1月の記帳開始から必要
青色申告特別控除とは?(おさらい)
青色申告特別控除とは、青色申告をしている個人事業主やフリーランスが、所得から一定額を差し引ける制度です。
たとえば所得が200万円の方が65万円の控除を受ければ、課税所得は135万円になります。所得税・住民税が大きく変わるため、フリーランスや副業をしている方にとって最も重要な節税の一つです。
現行(令和8年分まで)の控除額は次の3パターンです。
| 控除額 | 主な条件 |
|---|---|
| 65万円 | 複式簿記 + e-Tax申告(または優良な電子帳簿の保存) |
| 55万円 | 複式簿記 + 書面(紙)で申告 |
| 10万円 | 簡易簿記 |
この体系が、令和9年分(2027年分)から大きく変わります。
令和8年度改正で何が変わる?全体像
令和8年度税制改正(令和8年3月成立)により、青色申告特別控除は次の体系に再編されます。
| 控除額 | 条件(令和9年分以後) |
|---|---|
| 75万円(新設) | 複式簿記 + e-Tax申告 + 優良な電子帳簿等(請求書データの自動連携や訂正削除履歴など一定の要件) |
| 65万円 | 複式簿記 + e-Tax申告(電子申告が必須に) |
| 10万円 | 簡易簿記(ただし収入1,000万円超は対象外) |
| 廃止(書面申告+複式簿記は10万円へ) |
最大のポイントは2つです。
① 75万円控除が新設:65万円の要件(複式簿記+e-Tax)に加え、「優良な電子帳簿等」の要件を満たせば、さらに10万円上積みされます。
② 書面申告の55万円が実質廃止:複式簿記で記帳していても、紙で申告している方は10万円まで下がります。65万円以上を受けるにはe-Taxが必須になります。
適用時期は令和9年分(2027年分)以後の所得税から。住民税は令和10年分(2028年分)以後の適用です。実際に申告で影響が出るのは、2028年春の確定申告(2027年分)からということになります。
75万円控除の要件:「優良な電子帳簿等」とは?
75万円控除を受けるうえで新たに求められるのが、「優良な電子帳簿等」の備付け・保存です。現行の65万円控除(複式簿記+e-Tax)との違いは、ここを満たすかどうかだけです。
具体的には、65万円の要件に加えて、仕訳帳・総勘定元帳について「優良な電子帳簿」の要件を満たすか、請求書等のデータを一定の要件で保存して会計データと自動連携させる、といった対応が求められます。
「優良な電子帳簿」の主な要件
「優良な電子帳簿」とは、電子帳簿保存法が定める要件を満たした電子帳簿のことです。主に次の3つを満たす必要があります。
いつ・誰が・何を変更したかを後から追跡できる(または訂正・削除ができない)
② 帳簿間の相互関連性
仕訳帳・総勘定元帳など関連する帳簿の記録を相互に確認できる
③ 検索機能の確保
日付・取引先・金額などで検索できる
履歴が残らない単純な表計算ソフト(手入力のExcelなど)で作った帳簿は、この要件を満たさないため優良な電子帳簿とは認められません。対応した会計ソフトを使うことが事実上の前提になります。freee会計、マネーフォワード クラウド確定申告、弥生といった主要なクラウド会計ソフトは、すでに優良な電子帳簿の要件に対応しています。
注意:ソフトの設定有効化に加え「届出」が必要になる可能性
これまでも、優良な電子帳簿による控除の上乗せ(現行の電子帳簿保存による65万円控除など)を受けるには、あらかじめ税務署に「優良な電子帳簿の特例の適用を受ける旨の届出書」を提出する必要がありました。75万円控除でも同様の事前届出が要件になる可能性が高いとみられますが、届出の要否や様式の詳細は今後の国税庁の発表で確定します。「会計ソフトの設定を有効にすれば自動で75万円」ではなく、届出が必要になる前提で準備しておくと安心です。
重要なのは、2027年1月1日の取引開始時点から優良な電子帳簿での記録が必要という点です。優良な電子帳簿は「その年の1月から12月まで1年を通して」運用していることが前提なので、申告期(2028年春)になってから設定を切り替えても、2027年分には遡れません。
CFO目線:75万円控除の本質は「年初からの仕組み化」
会社の経理を見ていても、自分の副業の申告でも痛感するのは、優良な電子帳簿の要件は「申告のときに頑張る」では絶対に満たせないということです。訂正履歴も検索性も、1年を通してソフトに記録され続けて初めて成立します。だからこそ2026年のうちに、銀行口座・クレジットカードを会計ソフトに自動連携させ、請求書データもデジタルのまま取り込む体制を作っておくのが王道です。手入力を減らすほど記録は正確になり、結果的に75万円控除の要件も自然に満たせる。控除10万円分(税率20%なら約2万円の節税)は、年初の設定30分で取りに行ける、という感覚です。
📊 75万円控除に向けた「優良な電子帳簿」は会計ソフトで
優良な電子帳簿の要件(訂正履歴・検索・自動連携)は、対応ソフトを年初から使うのが最も確実です。freee・マネーフォワード・弥生はいずれも優良な電子帳簿・e-Taxに対応。銀行口座やカードの自動連携で、日々の記帳もほぼ自動になります。まずは無料で試せます。
65万円控除はどうなる?
65万円控除の基本は変わりませんが、要件が「電子申告が必須」に整理されます。改正後は、複式簿記で記帳し、確定申告書・青色申告決算書を期限内にe-Taxで提出すれば65万円控除です。
ただし、優良な電子帳簿等を用意しなければ75万円にはなれません。e-Taxで申告しているだけでは65万円止まりという点が、従来との違いです。
10万円控除の注意点:収入1,000万円超は対象外に
10万円控除(簡易簿記)にも変更があります。改正後は、前々年分の事業所得または不動産所得に係る収入金額が1,000万円を超える方は、10万円控除の対象外となります。
つまり、収入が大きくなってきた個人事業主は、簡易簿記のままでは青色申告特別控除がゼロになる可能性があります。収入1,000万円超が見えてきた方は、複式簿記への移行を検討する必要があります(複式簿記+e-Taxにすれば65万円控除が受けられます)。
改正前後の比較まとめ
| 申告方法・帳簿 | 改正前(〜令和8年分) | 改正後(令和9年分〜) |
|---|---|---|
| e-Tax+優良電子帳簿等/複式簿記 | 65万円 | 75万円 |
| e-Tax(通常)/複式簿記 | 65万円 | 65万円(変わらず) |
| 書面申告/複式簿記 | 55万円 | 10万円(大幅減) |
| e-Tax or 書面/簡易簿記 | 10万円 | 10万円(変わらず) |
| 簡易簿記(収入1,000万円超) | 10万円 | 0円(対象外) |
最も注意が必要なのは「書面申告+複式簿記」の方です。55万円から10万円へ、45万円分の控除が消えます。所得税・住民税合計で約20%と仮定すると、年間約9万円の増税相当の影響です。複式簿記でしっかり記帳しているのに、紙で出しているだけで大きく損をする形になります。
2026年中にやるべき準備
改正が適用されるのは令和9年分(2027年1月〜)の取引からです。申告のタイミング(2028年春)になってから対応しても手遅れになります。2026年中に、ご自身のタイプ別に次の準備を進めましょう。
現在 e-Tax+複式簿記で65万円控除の方(→ 75万円を狙う)
使っている会計ソフトが「優良な電子帳簿」に対応しているか確認し、対応していれば設定を有効化します(2027年1月の記帳開始に間に合わせる)。銀行口座・カードの自動連携や請求書データの取り込みも整えておきましょう。届出が必要になる場合に備え、国税庁の最新情報も確認しておくと安心です。
現在 書面申告で55万円控除の方(→ 最優先で対応を)
このままだと55万円が10万円に下がります。e-Taxへの切り替えを必ず実施してください。マイナンバーカード(またはID・パスワード方式)を準備し、会計ソフトのe-Tax連携を設定します。あわせて優良な電子帳簿の設定も有効化すれば、75万円も狙えます。
現在 10万円控除(簡易簿記)の方
前々年の収入が1,000万円を超えていないか確認しましょう。超えていれば10万円控除も使えなくなるため、複式簿記への移行が必要です。会計ソフトを使えば複式簿記も自動化でき、e-Taxとあわせて65万円控除に乗せられます。
まとめ
青色申告特別控除 改正の要点
- 令和9年分(2027年分)から適用(住民税は令和10年分から)
- 最大75万円控除が新設(複式簿記+e-Tax+優良な電子帳簿等)
- 書面申告の55万円控除は実質廃止(複式簿記でも紙申告なら10万円)
- 収入1,000万円超の簡易簿記は10万円控除の対象外(0円)
- 準備の勝負どころは2026年中。とくに「紙→e-Tax」と「優良電子帳簿の設定」は今すぐ
控除額の差は、そのまま手取りの差になります。「複式簿記で記帳しているのに紙で出していたせいで45万円の控除を失う」という事態は、2026年中の準備で確実に防げます。会計ソフトの設定と申告方法の見直しは、今日からでも着手できます。
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※本記事は2026年6月22日時点の情報に基づく一般的な解説です。改正内容の細部(優良な電子帳簿の要件・届出の要否など)は、今後の国税庁の通達・告示等で確定する部分があります。一次情報は国税庁「青色申告特別控除(No.2072)」および令和8年度税制改正関連資料を参照しています。個別の税務判断については、税理士等の専門家にご相談ください。
広告会社CFO|実務16年半|税理士試験4科目合格。
2026年4月に第一子が誕生、39歳のパパCFOとして育休・家計・税金をリアルに発信中。
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