※本記事は年末調整での「配偶者控除/配偶者特別控除」の実務チェックリストです。細部は勤務先の指示・最新版の国税情報に従ってください。数字は給与のみを想定した簡易目安を含みます。
他の記事
この記事でわかること
- 2025年(令和7年分)の年末調整で配偶者控除/配偶者特別控除を適用するための「準備 → 記入 → 提出後」の実務フロー
- 「うちの配偶者は対象か?」を、123万円/160万円/201.6万円の“年収の壁”でざっくり判定するコツ(給与のみ想定)弥生株式会社
- 2025年改正(基礎控除・給与所得控除アップ)で、103万円/150万円の壁がどう変わったかのイメージ整理 財務省
※本記事は「給与収入のみ」のパート・アルバイトを前提とした目安を含みます。実務では、会社の案内・最新版の国税庁資料に必ず沿ってください。
まずは“対象かどうか”を30秒でチェック
1. あなた(給与をもらう側)の条件
- 今年の合計所得金額が1,000万円以下であること
→ 1,000万円を超えると、配偶者控除・配偶者特別控除ともに適用できません。
2. 配偶者側の条件(2025年分)
配偶者が次のすべてを満たすか確認します。
- 法律上の配偶者である(事実婚のみは不可)
- 納税者と生計を一にしている(生活費を一緒にしている)
- 青色・白色の事業専従者ではない
- 年間の合計所得金額が次の範囲に収まっている
合計所得のライン(2025年分)
- 58万円以下 … 配偶者控除の対象
- 58万円超 〜 133万円以下 … 配偶者特別控除の対象
給与だけの配偶者であれば、ざっくり
合計所得 ≒ 給与収入 − 65万円(年収190万円程度までの概算)
と考えてOKです。
3. 給与収入ベースのざっくり目安(給与のみのとき)
上の式(年収 − 65万円)でざっくり計算すると、2025年分は次のような“壁”になります。
- 年収123万円以下
- 123万円 − 65万円 ≒ 58万円
- → 配偶者控除の対象(最大38万円/70歳以上は48万円)
- 年収123万円超〜160万円以下
- 所得は58万円超〜95万円程度
- → 配偶者特別控除だが、控除額は配偶者控除と同額(“満額帯”)
- 年収160万円超〜201.6万円以下
- 所得が増えるほど控除額が少しずつ減少
- → 配偶者特別控除の“逓減帯”
- 年収201.6万円超
- → 配偶者特別控除の対象外(配偶者控除・配偶者特別控除とも受けられない)
年末調整チェックリスト(配偶者控除・配偶者特別控除)
A. 事前準備(書類が配られたらすぐやること)
- □ 会社からの社内締切日を確認
- □ 自分の今年の収入見込みを整理(賞与・副業・雑所得があれば含める)
- □ 配偶者の年収見込みを、支給総額ベースでメモ(交通費の扱いは会社の説明に沿う)
- □ 配偶者に他の所得(事業所得、不動産所得、一時所得など)がないか確認
- □ 配偶者の氏名・生年月日・続柄、必要なら**個人番号(マイナンバー)**を控えておく
- □ 同一生計かどうか(生活費を一緒にしているか)を確認
- □ 年末までのシフト・残業・掛け持ちなどを見て、収入見込みが上振れしないかチェック
- □ 昨年からの変更点(就職・退職・育休・離婚/死別など)を洗い出す
- □ 「うちはどの壁?」系の診断ツール・シミュレーターがあれば、ざっくり帯を確認
- □ 書類の名称と所在を確認
└2025年分は「給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書」など、1枚にまとめられた様式が使われます(会社指定の書式に従う)。
B. 書類の記入(紙/Web共通)
- □ **あなたの合計所得見積額(1,000万円以下かどうか)**を確認・記入
- □ 配偶者の合計所得見積額を入力
└給与のみなら「年収 − 65万円」で概算(端数はおおよそでOK) - □ 「配偶者控除」か「配偶者特別控除」かの区分を、会社指定の方式(自動判定/マニュアル)に沿って選択
- □ 配偶者の氏名・カナ・生年月日・個人番号などを住民票どおりの表記で記入
- □ マイナンバーの記載・本人確認書類(写し)の提出が必要か、会社の案内で必ず確認
- □ 「生計を一にする」「合計所得は見込み」等の確認チェック欄を漏れなくチェック
- □ 同じタイミングで、保険料控除・小規模企業共済等掛金控除・住宅ローン控除など他の年末調整書類も処理
- □ 桁や単位(円/万円)を間違えていないか、ひと目で見直し
- □ 扶養親族欄と配偶者欄を混同していないか確認
- □ そもそも要件を満たしていないケース(配偶者の合計所得>133万円、あなたの合計所得>1,000万円)は、無理に配偶者控除等欄を埋めない
C. 提出〜年末調整後のチェック
- □ 社内の締切までに提出(紙なら回収、Webなら送信完了を確認)
- □ 会社からの差戻し・問い合わせには早めに回答(年末は人事・総務側も非常にタイト)
- □ 年末調整後に交付される源泉徴収票で、「配偶者控除」「配偶者特別控除」の欄が想定どおりか確認
- □ 年末ギリギリで配偶者の見込み年収が大きく変わった場合
└会社の規程に従って再計算するか、翌年の確定申告で調整 - □ ふるさと納税(ワンストップを使っていない場合)・医療費控除・住宅ローン控除初年度など、別途確定申告が必要なケースがないか確認
かんたん判定のコツ(給与だけのとき)
2025年分以降のざっくり判定は、次の3ステップで十分です。
- 配偶者の年収を確認(交通費の扱いは会社のルールに従う)
- 「年収 − 65万円」で合計所得のイメージをつかむ
- 下のどこに当てはまるかを見る
- 年収123万円以下 → 所得約58万円以下 → 配偶者控除(満額帯)
- 年収123万円超〜160万円以下 → 所得58万円超〜95万円以下 → 配偶者特別控除(満額帯・38万円)
- 年収160万円超〜201.6万円以下 → 所得95万円超〜133万円以下 → 配偶者特別控除(段階的に減少)
- 年収201.6万円超 → 所得133万円超 → 配偶者特別控除も不可
ポイント:
- 2025年改正で「103万円の壁」は、“配偶者控除の目安”としては123万円に。
- 「配偶者特別控除を満額受けられるライン」は160万円になりました(旧150万円)。
記入でつまずくポイント(実務メモ)
「収入」と「所得」を混同してしまう
- 書類が聞いているのは「合計所得金額」。給与だけなら「年収 − 65万円」が目安です。
“見込み”で書いてよいか不安
- 年末調整はあくまで「見込み」でOK。あとでズレた場合は確定申告で精算します。
誰の控除なのか分かりにくい
- 控除を受けるのは「給与をもらう本人」。配偶者本人の年末調整ではありません。
税法上の扶養(123万円の壁)と社会保険の扶養(106/130万円の壁)をごちゃ混ぜにする
- 税と社保は別ルールです。税は123万円・160万円・201.6万円、社保は106万円・130万円(今後の改正予定は別途確認)。
新設の「特定親族特別控除」と混同する
- 19〜23歳の子ども向けの制度で、配偶者控除とは別枠です。申告書のどの欄がどの制度か、会社のマニュアルをよく読む。
よくあるNG
□配偶者の見込み額を手取りで書いてしまう(必ず税込支給額で)
□配偶者特別控除なのに「配偶者控除」にチェック(区分を要確認)
□前年の情報をコピペして提出(今年の見込みで更新を)
□マイナンバー記載漏れ/本人確認書類の提出漏れ(会社の案内に従う)
□締切後の修正になり、年調計算に乗らない → 確定申告が必要に
迷ったら:当サイトの関連ガイド
まとめ
2025年分から、基礎控除・給与所得控除の引き上げにより、「配偶者控除/配偶者特別控除」の年収目安が123万/160万/201.6万ベースにアップデートされています。
判定の軸は
- あなたの合計所得:1,000万円以下かどうか
- 配偶者の合計所得:58万円以下か/58万円超〜133万円以下か
給与だけなら「年収 − 65万円 ≒ 合計所得」と考えると、実務上のざっくり判定がスムーズです。
社会保険の扶養条件(106万/130万の壁)や、特定親族特別控除など他制度との混同に注意しましょう。




コメント